<美容室の若者>

  

美容室でカラーリングをしてきました

 

シャンプーばかりをやっているらしい

その担当の若い男性は

一日に何十人もの髪を洗っているのだと思うのに

上の空でもなく、機械的でもなく、手馴れた優しさでもなく、

「髪を濡らしますね・・・温度はどうですか?・・・」などと聞く調子が、

まるで恋人に語りかけるように、心をこめた、優しく丁寧な口調なのです

 


【客】という、顔の無いひとくくりの存在ではなくて

今日、いま人生を生きている1人の人間として、扱っているように感じました

 

あの若者はこれからどんな美容師に育ってゆくのだろうと

ちょっと不思議な気がしたものです

 


たいていの人は何かをしながら何かほかの事を考えています

今ここに居ながら、心がどこかに行ってしまっていて今ここに生きていないのです

 


自分が熱中できる好きなことをやる時ばかりではなく

今、この場でやっていることにすべての注意を総動員して意識を向けたとき、

人生はとても手応えのあるものに変わるでしょう

 


そして、それはとても難しいと、感じる日々なのです

 

2001.8.17 

 

2002.9.1

あれから、何度もこの美容室に行っていますが、

未だに『あの若者』がどの人だったのか判りません。

 

10人前後のスタッフが驚異的な体力でいつも忙しく動き回る、

この美容室は、誰がリーダーなのか、

”特別”なスタッフがいるのかどうか、

それさえ判らず、誰もが、来る人に対して優しく語りかけ、丁寧なのはなぜでしょうか。